「都合の良い時ばっかりなんて言ってるけど……私も結局、誰かを利用しようとしてるんだ」
「毒島さん……」
何か、言わなきゃ……。
何かって、こんな時に何を、言えばいいんだろう。
つくづく、自分のコミュニケーションスキルの無さに嫌気がさす。
こんなことになるなら、尚先輩の『恋愛コミュニケーション術』の本でも馬鹿にしないで読んどくんだった。
「よーし、女子も男子も半分ずつに別れて、バスケの試合するぞー」
「あ、それじゃあ私、前半に試合だから……。話、聞いてくれてありがとう、真木さん」
そう言って、笑顔で手を振り離れて行く毒島さんの姿を、何とも言えない気持ちで見送る。
どうして、ありがとう?
余計に、毒島さんを追い詰めちゃったのに……。
「ありがとう……なんて、言われるような事してないんだよ……」
『……聞いてくれただけで、良かったんじゃないのかな』
「早織……そうなのかな」
早織は私の隣に立って、毒島さんのことを見つめてる。
早織の方が、人付き合いも上手いし、こういう時、気の利いた事も言ってあげられたんだろうな。
私なんかより、ずっと……。


