「ごめん、ありがとう……」


誤魔化すようににして髪を耳にかける。

落ち着かなくなったり、嘘をつく時についてしまう癖だった。


「それはいいけど、お前一回保健室行けって、な?」



海斗の腕から離れると、海斗は長身を屈めて、心配そうに私の顔をのぞき込む。


わっ……。

海斗の目って……こんなに近くで見て初めて気づいた。

曇りなく……すごく、真っ直ぐで澄んでるんだ……。



『なぁに、見とれてるんだ?』


「なっ、違う!!」


からかってくる早織の声に赤くなりながら声を上げると、海斗は驚いたように私を見た。



「ち、違うって何がだ?」


「あっ……な、何でもないから。とにかく、続きしないと」



そう言って、海斗に背を向けて本棚を点検し始めると、海斗もその後ろをついてきた。


「なぁ、本当に大丈夫かよ?」



まだ言ってる……。

どんだけ、心配性なの、海斗は。

クラスの人気者なのに、私なんかに気を遣ったって、なんの利益もないんだよ?