――ズキンッ。


「うっ……」


頭痛がする……頭が、割れそう。

あの日のことを考えると、こうして頭が痛くなるから嫌だ。



『湊……大丈夫、大丈夫だよ、落ち着いて』


っ……早織……っ。

そうだ、大丈夫……早織は、ちゃんとここにいてくれる。

頭をおさえると、早織が心配そうに私の顔をのぞき込んできた。


「おい、湊大丈夫か?具合悪くなったか??」


「う、ううん、平気だから……っ」


「いや、平気そうに見えねぇよ!」



私の体を支えてくれる海斗。

その腕の中で、幻覚は、失った痛みを補おうとする働きだと、病院の先生に言われたことを思い出す。



『湊、深呼吸して、きっと痛みも引くからっ』


「はぁっ……うんっ……」



失っただなんて、言わないでほしい。

誰にも見えなくても、聞こえなくても……。

早織は……ちゃんとここにいてくれてるのに。



「ふぅ……はぁ……」


早織に言われた通り、呼吸を整えると、静かに頭痛がおさまってきた。