「よし、やるぞ」
「おいおいおいっ、待てって湊!」
すると、助走しかけた私の腕を掴んで、海斗が本を取り上げた。
掴まれた手にドキッとして、心臓が大きく跳ねる。
「えっ、海斗!?」
なっ、どうして海斗がここに!?
というか、なんで私の後を追ってきたの?
たくさんの疑問に、頭が軽くパニックになる。
「お前何するつもりだよ!」
「え、ジャンプ収納」
「……ぶはっ!!なんだよそれ!正気かよ!?」
あろうことか、海斗は爆笑しだした。
よく笑う人だなぁ……この人。
「って、正気かよって……案外酷いこと言うよね、海斗」
「だってよ……面白れぇーんだもん。でもなぁ、近くに俺も尚先輩もいるんだから、こーいうのは、男に頼れって!」
そう言って、私から取った本をすんなりと高い本棚に戻す。
やっぱり、海斗は背が高いんだなぁ。
高校に入ってから、男子とはほとんど接点なかったし、私にも恋に憧れた時期があったけど……。
早織のことがあってからは、そういうのも恋に躍起になる周りの子ほど興味は無くなってた。
「危なっかしいーヤツだな、湊は」
「そうかな、早織ほどじゃ……あ」
「早織?早織って、誰のことだ?」
つい、早織のことを呼んでしまった。
私よりも、早織の方が、おっちょこちょいで、あの日、川で溺れたのだって……。


