「あ?いるって、何が??」


「さて、尚先輩、私は本の整理をしてきます」



突っ込まれると思った。

だから、あらかじめ用意しておいた逃げ道を使うことにする。

こういう時は、話をそらしてこの場から退散するのがベストだ。



「うん、ありがとう、湊。いっつも助かってるよ!」


「いいえ、それじゃあ……」




なんというか、理由が逃走なだけに、そう笑顔を向けられると、良心が痛むな。


でも、私は親友を守るために、カウンターから出てると、
逃げるように本棚へと向かった。


本棚へやってくると、返す場所に返ってない本や、逆さまに入れられた本など様々あった。



「もう、ちゃんと元の場所に返せないかな」


それを、一つ一つ丁寧に直しながら、文句を呟いていると、高い棚へ返す本が、自分の身長で届かない事に気づいた。


『ええっ、湊、まさかまたやるの?』


すると、自然と本棚から距離をとって助走スペースを確保している私に早織が声をかけてきた。



「え?やるよ、ジャンプ収納」



図書委員になって、この手の事件に遭遇することは少なくない。

だからか、私はジャンプして、瞬時にあの狭い隙間へと本を戻す技を習得してたりする。