「立ってるのもなんだし、2人とも座ったらどう?」
尚先輩に促されて、私たちは席に座ることにした。
本の貸出を受付するパソコンを起動しながら、尚先輩は私たちを見つめて、突然ニヤニヤし始めた。
「湊が誰かを連れてくるなんて驚いたぞ〜」
「そう……ですね、ていうか、どうして尚先輩わらってるんですか」
なんというか、からかわれてる気がするのは気のせい?
これは、連れてきたっていうか……勝手に高橋くんがついてきた……の方が、正しい気がする。
チラリと高橋くんを見れば、バチッと目が合った。
「なぁ、真木は尚先輩とはよく喋るんだな」
「……そうかな?」
自分ではよく分からないけど、尚先輩は話しやすい。
気を遣いすぎないし、向こうも自然体だからかな、居心地が良いと言えばいい。
「俺も真木のこと湊って呼んでもいいか?」
「……え?」
どうして急に、呼び方の話に?
あまりの話の飛翔ぶりに、キョトンとしてると、高橋くんは「だって……」と続ける。
「俺だけ真木って、よそよそしくね?もう俺ら友達だろ、だから俺は湊って呼ぶ。そんでお前も、俺を海斗って呼べよ?」
「え、私たちいつの間に友達になったの?」
友達の定義とか、よく分からない……。
少なくとも、私が高橋くんとちゃんと話したのは、今日が初めてなんだけど。


