「泣きたくなったら俺が抱き締めてやるよ」
「っ、うん……嬉しいよ」
嬉しい……海斗の優しさが。
思わず泣いてしまいそうなくらいに。
「だから……頑張れ、湊!」
そっと、目尻に優しくキスされる。
まるで、私におまじないをかけるみたいに。
不思議なくらい力が湧いてきた。
「行ってきます、海斗!」
「行ってらっしゃい、湊!」
笑顔で手を振ってくれる海斗に見送られて、私は買い物袋を手に、家へと入るのだった。
***
そして、肉じゃがやお味噌汁、ぶりの照り焼きを焼いて、テーブルに並べる。
すると、玄関のほうでガチャンッとお母さんが帰ってきた音がした。
「すぅ……はぁー……」
頑張れ、頑張れ!
大丈夫、何かあったら海斗の所へ行けばいい。
だから、ちゃんと伝えるんだ。
バクバクと鳴る心臓を、私は深呼吸で落ち着けてリビングの扉が開くのを待った。
――ガチャンッ。
そして、リビングの扉が開くと、お母さんが帰ってくる。


