「でも、なんで肉じゃがなんだ??」
「あ……うん、お母さんに作ってあげた初めての料理だから」
お母さんは、私が作った不格好な肉じゃがをおいしいって言ってくれた。
たったそれだけで、私は料理作りが大好きになったんだ。
「うちは、私が生まれてすぐに離婚してるから、お母さんとずっと2人暮らしだったの」
「そうだったのか……大変だったな」
海斗に話すのはこれが初めてだ。
だからか、驚きながらも労わってくれるその言葉に海斗の優しさを感じる。
「ううん、私にはお母さんがいたから、幸せだった。仕事で忙しいお母さんの力になりたい、そう思って料理も続けてきたの」
「湊は、優しいな」
海斗は、カートを片手で押して、空いた手を私の頭をポンポンと撫でた。
それに、なんだかくすぐったい気持ちになる。
「そんな私の肉じゃがを、おいしいって食べてくれたあの笑顔を思い出すから……」
「2人にとって大事な思い出か……でも、羨ましいな。俺は、両親とも事故で死んでるから、父親とか、母親っていうのが分からない」
「えっ……」
衝撃の事実に、私は目を見張る。
海斗のお父さんとお母さん、亡くなってるの……?
そんな、いつも笑顔だから分からなかった。
海斗が、そんな辛い思いをしてたなんて……。


