「っ……つい、数日前から、見えなくたっちゃったんです……」


「湊……」



そんな時、カタカタと震え出す手を、海斗がギュッと、握ってくれる。

それに勇気をもらいながら、話し続けた。



「もう、私は必要ないからって……。先生、私が早織を忘れちゃったから……っ、早織は消えちゃったんですか?」


私が、いつも傍にいて支えてくれた早織を……。

蔑ろにしたから??



「湊ちゃん、前に幻覚は……失った感覚を補おうとする働きだって言ったのを、覚えてるかな」


「あ……はい」


「湊ちゃんにとって、早織ちゃんはかけがえのない、自分の一部だったんだね。だから、湊ちゃんは早織ちゃんを取り戻そうとした」



私の一部……そうかもしれない。

何をするにしても、早織と一緒であることは必須。

それを失った時の痛みに、耐えられなかったから……。

それは、早織を取り戻す事でしか、埋められない喪失感。



「湊ちゃんは早織ちゃんを幻覚という形で取り戻して、なんとか心を保っていたんだ」


そう、早織が現れてからは、私はやっと生きてる心地がして、ご飯も食べられるようになったんだっけ。