「ぶっくく……なぁ、何でフルネームなんだよ?」
「えっ、あ……」
あぁっ、ついフルネームで呼んでしまった……。
心の中では、高橋 海斗って呼んでたから。
なんとなく、恥ずかしくて俯いていると、高橋 海斗……高橋くんは、私の顔をのぞき込んでくる。
「ふーん、真木って、そんな顔もすんだな?」
「……え?」
「ほら、いつも無表情だろ、教室で」
あぁ、それは……。
クラスに、友達と呼べる人なんていないし、むしろみんなが私を気味悪がってるから……。
そんな居心地の悪い所で、誰がイキイキできるんだろうって話だ。
「だって、笑う理由が無いし」
「そういうもんか?いや、でもお前、たまに1人で笑ってねぇ?」
でたよ、結局高橋くんも私を馬鹿にしたいだけだ。
早織の姿は、誰にも見えないし、声も私にしか聞こえない。
そう、チラリと早織に視線を向けると、困ったように微笑んでる。
早織は、私が早織の事で何かを言われる度、申し訳なさそうな顔をするんだ。
こんな顔……させたくないのに。
「……笑いたいなら、笑ってくれていい。どうせ高橋くんも、私が気持ち悪いって言いたいんでしょ」
……みんな嫌い、目に見えるものだけで人のことをわかった気になって。
無性に腹が立って、私は高橋くんに喧嘩腰になってしまった。


