「早織、ごめん……早織のこと、傷つけたなら謝る。だから、いなくなるなんてっ……言わないでっ」
あなたがいなくなったら、私はまた……っ。
また、心を壊してしまう!!
「お願いっ、早織っ」
「おい、湊大丈夫か!?」
我慢出来ず泣き崩れそうになった私は、とっさに腕を伸ばした海斗に抱きとめられる。
『大丈夫だよ……本当は、これが正しいの。今の湊に必要なのは、もう私じゃないから……』
「早織っ!!」
ゆっくりと、早織の姿が透けていく。
それに、心臓がバクバク、ズキズキと言い表せない痛みを連れて暴れだした。
「だ、駄目……」
駄目、駄目だよっ……。
何で、勝手に決めて、消えようとしてるの?
「やめて……置いていかないでっ……やだ!!」
早織の体の向こうに、風景が透けて見えた。
私は、腕が千切れんばかりに、早織へと手を伸ばす。
『さよなら、湊』
「行かないで、早織ーーっ!!」
さよならなんて言わないで、ずっと一緒にいてよ!!
夏休みの、人の少ない廊下で、私の声だけが響く。
早織の姿が完全に消えると、私は伸ばした手もそのままに、放心状態になった。


