――ズキンッ。
痛い……早織のことを思うと、胸が痛む。
『ねぇ湊、それならもう……私は必要ないね』
あの言葉が、頭の中に甦った。
不安になって、早織の姿を探すと、早織は私たちの少し前を歩いていた。
その背中が、遠くなった気がして、私は少しだけ足を早める。
「湊、そんな急いでどうした?」
「え、あ……ごめん、何でもない」
急に早歩きしはじめた私を不思議に思った海斗が私を引き止めた。
「あ、その本『よみがえり』か!前に、湊が読んでたよな」
「えっ、あ……うん」
海斗が話し出したので、私は歩くスピードを緩める。
そういえば……。
私が、これを読んでる時に海斗が図書室に来たんだっけ。
まだ、私が海斗を警戒していた頃の話だ。
「そういえば……ぶっ、こん時の湊に、俺すげー嫌われてたよな!」
「あ、ち、違うよ。私、別に海斗のこと嫌ってたわけじゃ……」
吹き出した海斗に、慌てて弁解する。
だって、海斗ってば距離近いし……。
クラスの人気者が正反対のクラスで浮いた私を構う理由が分からなかったから。
「あの時の私は、早織意外に誰も信用できなかったの。それに、もともと愛想のいい方じゃないから……」
「でも、尚先輩には心許してたみたいに見えたぞ。なんか、思い出したらムカムカしてきたわ」
そんな、恨めしそうに見られても……。
は、反応に困るよ。
第一、今は海斗が一番なんだから許して欲しい。


