「早織さえいてくれれば、私はいいんだもん」
他の誰かなんていらない。
早織さえ、私の傍にいてくれれば……それで。
『……うん、知ってるよ』
その声が、やけに寂しげに聞こえて、反射的に振り返った。
すると、早織はいつもと変わらない笑顔を浮かべてる。
あれ……気のせいだったかな?
今、寂しそうな声に、聞こえたんだけど……。
そんなことを考えていると、教室の扉が、ガラガラッと開いた。
「お、何だまだ残ってるヤツいたんだな」
そこに入ってきたのは、クラスの人気者、高橋 海斗だった。
残ってると、何か問題でも?
つい、かけられた言葉に皮肉を返してしまうのは、私の悪いくせだなと思う。
「…………」
うーんと、私に話しかけて……るんだよね?
何か、返事をするべき?
それとも……。
あれこれ、頭の中で考えていると、いつの間にか目の前に高橋 海斗がやってきた。
無造作にセットされたミルクティーのような淡い髪と、整った顔が近くにある。
――ドキンッ。
背の高い彼に見下ろされて、不覚にも胸が高鳴ってしまった。
「たっ、高橋 海斗っ」
「え??」
そのあまりの距離に驚いて、つい声を上げてしまう。
すると、キョトンとした高橋 海斗は、すぐに「ぶっ!」と吹き出した。


