「じゃあ帰り!帰りにデートしよーぜ」



そう言って、甘えるように後ろから私を抱きしめる海斗。

背中に海斗の温もりを感じて、ドキドキしてしまう。


っていうか、尚先輩も文子もいるのに!



「あ、それなら!!『彼女も大喜び間違いなし!秋のデートスポット特集』のこの雑誌がオススメだよ!」


「この図書室に、そんな雑誌置いていいのか?でもまぁ……今まで勧められた本の中ではダントツ1位っすね」



まぁ、確かに……。

今まではちょっと読むのに抵抗ある本のチョイスばっかだったもんね。



尚先輩が広げた雑誌を、海斗は興味津々に見ている。

もちろん、私を抱きしめたまま。



「私、すごく意外だったなぁ」


そんな私たちを見て、文子がしみじみと呟いた。


意外って、どういう意味??



「海斗くんって、クラスではみんなを引っ張ってく人気者なのに、湊ちゃんにはデレデレ……だよね」


「デレデレ……」


これを、人様はデレデレと言うのか。


なんというか……今まで好きな人も出来たことないし、だからもちろん彼氏なんて出来たことがなかった。

だから、海斗の愛情表現に耐性が無くって、恥ずかしい。



「どんな男でも、好きな女が出来たらこーなるぞ」


「確かに、海斗の言うとおりだよ。本気の恋なら、意外と男の方がのめり込むんだよね!」


「そうそう!だから、俺ももう、湊しか見れねーんすよ」



海斗と尚先輩が意気投合し始める。

やめて、私をデレ殺しするつもりなの、この人たち。



嬉しいを通り越して、少し怒りを覚え始めた頃、図書室の扉がガラガラと開いた。