「お前……それをずっと、背負って生きてきたのか……。だからあんな必死に……」
「ううん、あの時は……文子と早織の姿が被って、本当に助けるまで、私は文子を早織だと思いこんでた」
見間違いなんて、生ぬるいものじゃない。
私には本当に早織に見えたし、プールじゃなくて川の中にいるみたいだった。
「なっ、思い込んでたって……そんなこと、あるのか?」
「ごめん、これ以上は……言いたくない」
「湊……」
そんなこと、あるから言ってるんだ。
私には、早織の幻覚が見えるし、あの日のことを、もう1度経験してるみたいに時々思い出す。
「でも、本当に文子のことが好き。ごめん、勘違いして、助けたりして……っ」
「湊ちゃん……」
最低だって思われていい。
だけど、文子のことが大切なのは、変わりない。
それだけは伝えたかった。
「たとえ、湊ちゃんが勘違いで私を助けたのだとしても……」
「っ……」
――ズキンッ。
痛い……。
私が、してしまったことを文子の口から聞くのは……。
やっぱり胸が痛いよ。
そんなこと、思う資格すら無いのに。