「……ごめん、文子……。私、本当は文子とと早織が、重なって見えて……」


「湊ちゃん……」




いつまでも、隠し通すには……無理がある。

そう、本当は……私、この胸にある重荷を、少しだけ降ろしたかったのかもしれない。



「早織はあの日、川で溺れて死んだの」



その一言に、2人が息を呑むのがわかる。

『死んだ』と、そう口にするだけで震える。

それでも、私は話を続けた。



「早織が……どっちが早く向こう岸に行けるか勝負しようって、言私たちは川の中、必死に向こう岸を目指した」



話しながら、あの日の記憶が蘇る。

そう、消しても消えない、変えようもない……私の後悔。



「そしたら、どこか深いところに足を取られた早織が、目の前で溺れたの」


「それで、早織さんは……」


息を呑むの文子に、私は静かに首を横に振った。


「その後、私は早織を助けようとして、一緒に溺れて……。やっと掴めた早織の手も、息苦しさと、強い川の流れに離れちゃった……」



繋がれた手を、ギュッと握り返す。

そう、あの……誰かを光に導く手を、失ってしまった。



「なぁ、お前がプール休んでるのって……」


「そう、あの時のことを思い出すから、水が怖いの……。私の大切な人を、奪われたから元凶だから」



あっという間に……あの川は、私と早織が重ねてきた思い出も、これからの未来も全部……。


まるで、川の流れの一部に溶け込むように、本当に自然に、かっさらっていった。