「ううん!湊ちゃんがいなきゃ、どうなってたか……。本当に、感謝でいっぱいなの!」


「そんなこと……」



違うんだよ、文子……。

私は、結局……弱いままで、文子を早織だと錯覚したまま、助けたんだ。


いたたまれなくて瞳を閉じれば、そんな私の手を、文子が両手で包んでくる。


文子の手、温かいな……。

この手の温もりを、失わなくてよかった。



「ありがとう、湊ちゃん!」


「……ありがとうだなんて、言わないで……っ」



もう、我慢出来なかった。

罪悪感に耐えられなくて、つい本音が零れる。



「私っ……文子のこと……っ」


「……もしかして、早織さんのことかな」



――ドクンッ。


「え、どうして……っ」



笑みを浮かべたまま、核心をついた文子に、私は心臓が飛び出そうなくらいに驚いて、言葉を失った。




どうして、気付かれてるの……?

ううん、それだけじゃまだわからないよね。

でも、どうして早織のこと……。



「私を助けてくれた時、早織さんの名前を呼んでたから、もしかしたら、湊ちゃんは早織と私を……」



ここまでバレてるのに……。

話さないなんて……出来ないよね。