「俺が、守ってやれたらいいのに……っ、ごめんな、抱きしめるくらいしか……出来なくてっ」


「ううん、傍にいてくれるだけでいい……っ」



もう、この手からすり抜けていかないで。

大切なものが、失われないように。

私は強く海斗の胸にしがみついた。



――ガラガラガラッ。

「あの、湊ちゃ……あっ」



すると、突然保健室の扉が開く。

扉を見れば、文子が顔を赤くして立ち尽くしてきた。


あ……今、私……海斗に抱きついてるんだった!

やだ、こんな所見られたらっ。

超絶に恥ずかしすぎる。



「ご、ごめん……えと、文子元気そうで良かった」


恥ずかしくなって、パッと海斗から離れた私は、ぎこちなく文子に笑みを返す。


あぁ、今すぐ穴に埋まりたい。


「あ、うん!おかげさまで、湊ちゃんのおかげだよ!」



あ……。

文子は、知らないんだ。

私が文子をたすけたのは……。



「ううん、私は何も……」



私の方へ歩いてくる文子の顔が見られなかった。

それは、私の罪悪感のせい。