「湊、頼むから……勝手にどっかに行くな」
「あっ……」
そう言って、海斗が私の頭を、胸へ引き寄せる。
ガッシリとした胸板に、なぜだか全て委ねてしまいたくなった。
「いつか、湊の見てる世界が……俺にも見えたらって思うよ。そうすれば、お前のこと、もっと理解してやれる」
私の見てる世界……。
それを、海斗は理解しようとしてくれてる?
「あぁ……っ」
それを聞いた瞬間、ポタポタと涙が零れる。
そっか、その言葉が……ずっと欲しかったんだ、私。
誰かに、認めてほしかった……早織のことを。
「何も話せなくて……ごめんっ。でも、本当は……本当はっ」
なにもかも話してしまいたい。
でも、それを聞いたら……海斗も私を変人だと思うかも。
それは……辛くて、耐えられそうにないから……っ。
「湊……お前、本当に何が抱えてんだよ……。そんな苦しそうに泣くくらい、大きなもんなのか?」
海斗は、私を強く抱きしめてくれる。
少し痛いくらいがいい、だって……。
離れていかないって、分かるから……。
「ごめん、ううっ……」
もう、何に対して謝ってるのかも分からない。
取り返しのつかない過去に対してか。
それとも、文子への罪悪感に対してなのか。
何も話せない海斗への申し訳なさへなのか……。


