「湊、ほら手ぇ伸ばせ!!」
「うん……」
力なく手を伸ばせば、強く引き上げられる。
そして、そのまま海斗の胸に抱き寄せられた。
「馬鹿、無茶苦茶すぎんだよ、湊は!!泳げねぇのに飛び込む馬鹿がいるか!?」
「海斗……」
すごく、怒ってる……。
海斗が怒ってるの見たの、文子がイジメられてた時以来かも。
そっか、海斗は私のことを心配して……。
「……っ、ごめん……」
海斗が傍にいると分かった途端、安心する。
その胸に額をくっつけて、身を預けた。
「うぅっ……」
なんだかホッとして、涙が止められそうにないや。
もう頭の中、いっぱいいっぱいで……っ。
「湊、お前……震えてる」
そう言って、海斗は強く私を抱きしめると、すぐに腕を解いて、私の肩に手を回した。
「先生、コイツ保健室連れてきます」
「あぁ、高橋、頼んだぞ」
そう言って、瞬く間に私は海斗に連れられて保健室へと向かった。
その間、会話らしい会話なんてなくて、ただ無言で保健室へとやってくる。


