「ねえ、なるちゃん」
「え?」
横から入ってきたのは望さんだった。
青いカラーコンタクトが愛海を見る。
愛海は少しむっとした顔をする。
「何ですか?」
「俺の事分かるかな?」
「一応ね」
望さんは息を漏らすように笑った。
私は少し驚いてしまった。
こんな笑顔、初めて。
「お姉ちゃんの話も、聞いてあげてね」
「はぁ?関係なくないですか?」
「見てて、ムカつくし」
彼の眉間にキュッと皺がよった。
怖い。
さっきの笑顔は嘘のように消えた。
この前と同じ、凄く優しい空気。
愛海が怒られてるのに、
私心地よく感じてる……?
嫌だ、凄く嫌な子。
「望さん……」
「ん、何?」
振り向くときの表情が違った。
愛海は私を睨んでる。
「すいません……」
「何で謝るのさ」
“バンッ”
机を叩いたのは愛海だった。
頭をだるんと下に向けている。
怒ってるの?
泣いてるの?
私は戸惑って何もいえない。
お姉ちゃんなのに、意地悪なんて……。
「何かムカついた。あたしやっぱり帰る」
「な、愛海ちゃん?」
大家さんが焦って引き止める。
愛海は自分のお皿を台所に運んでいく。
本当に怒らせちゃった。
……馬鹿だ。
「ごちそうさまでしたっ」
“ガチャン!!”
リビングに沈黙が広がった。

