「んしょっ……。」
“ギギ、ギギギギギ……。”
赤い顔してドアを開ける私の顔は、何だかタコみたいに醜い。ちょっと恥ずかしいな。
そう思いながらも何とかドアを開ける。
ストッパーを手繰り寄せてドアに挟むと、私は玄関の段差を越えようと手に力を込めた。
「……っ!!」
“ガンガンガン!!!”
何度もやらないと、休んだら疲れる。
そして五回ほどやったら疲れ果てて止めてしまう自分。ああ、情けなさ100%?
階段の上から足音が聞こえる。
誰か来たら不審に思うんだろうな……。
「あれぇ?」
「あ……。」
後ろを振り向いたら、さっきの人。
えっと確か……。
「望さん……?」
「あ、香奈子ちゃん覚えててくれたんだ~、嬉しいな。でもそこで何してるの?」
「段差があって入れなくて……。」
「手伝う?」
階段を駆け下りて来てくれる望さんだけど、やっぱり悪いよ……。
それに、自分でやるって決めたんだもん。
甘えちゃダメ。
「大丈夫です、自分で。」
「う~ん、じゃあここで見てる。」
階段の三段目にちょこんと座ると望さんは私をじっと見てくれている。
それがどういう意味なのかはよく分からないけど、ちょっと休んだら大丈夫な気がして深呼吸をする。
よし、いける!
「えいっ。」
“ガコン!!”
大きな音と共に越えられる壁。
やった、できた!!
嬉しくて満面の笑みで振り返る。
望さんは小さく拍手してくれる。
優しい人なんだな、この人。
「やったね。」
「はい。」
「じゃあ俺、帰るね。」
手を振ると望さんは階段を上がっていく。
私の音が聞こえてきたの?
やっぱり近所迷惑なんだ。
気をつけなきゃいけない難題が山積み。

