「はは、なんてね。」 「へ?」 「嘘。」 田中さんは笑ったまま押してくれる。 でも、分かった。 私のお母さんへの笑顔と同じ。 だって、それが偽りだって。 すぐ、分かったもの。 「……そうですか、良かったぁ。」 「何で?」 「変なとこに突っ込んだと思いました。」 「ははは……。」 ねえ、貴方の過去は関係ない。 けど、貴方を傷付けちゃいけない。 そんな気がした。 「猫、可愛いですね。」 「僕も好きだよ。」 「ニャー」 猫の声が、聞こえた気がした。