10年愛してくれた君へ


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「…い。藍」


「!?」


パッと目が覚めた。


机に突っ伏した状態の私。


そしてそんな私の顔を覗き込んでいるのは…




「は、春兄!!」



心拍数が上がる。


夢の中ではあっても、春兄に告白されたのだから。


今まで夢の中に春兄が出てくることは何度かあったけれど、それも朝起きれば思い出せないほどの些細な夢だった。


なのに、どうしてあんな…




「藍、泣いた?」


「え?」


よく見ると、参考書のページが濡れている。


慌てて裾で目を擦ると、裾も濡れた。



泣いたんだ、私。


でも、どうして?


どうしてあの夢で私は泣いたの?




「怖い夢でも見た?」


春兄は親指で私の涙を拭った。


その仕草に胸がドキッとすると同時に、今まで春兄に対して感じたことのないような変な感覚に焦って顔を背けてしまった。



「あ、ごめんな」


私が涙を拭われたのが嫌に思ったと勘違いしたのか、春兄が謝ってくる。


「あ、ごめっ…違うの」


おかしいなぁ。


何でこんなにドキドキしているのかな。




あ、きっとあれだ。


夢に出てきた人を現実で意識するっていう、あれだ。


それで今春兄にドキドキしているんだ。


そう自分に言い聞かせ、春兄の方を向き直した。


「ちゃんと問題に目通そうとしてたんだな」


開かれたままの参考書に目を移す春兄。


「…でも、睡魔に負けて寝ていたのか」


「…うん、なんか、気がついたら寝てて」


ハッと思い時計に目をやると、19時になっていた。