10年愛してくれた君へ

「とりあえず、あんたは勉強みっちり教えてもらいなさい」


「うん、頑張るよ」


食事を終え、食器を返却口へ持って行き、教室へ戻った。


次の授業が始まるまで、頭の中で今日の予定を確認してみる。


春兄が来るのは18時だから、それまでに言われた通り参考書の問題に目を通しておこう。


あ、家にお菓子なかったっけ…


飲み物はあるけど、食べる物が…帰りに買えばいいか。


待って待って、最近模様替えして、完全に部屋の中が片付いていないんだった!

それもやらないと。



あとは…



「鵜崎、何悩んでんだ?」


「あ、河西くん」


お昼から戻って来た河西くんが私の隣に座った。


「あんたたち、まだ苗字で呼び合ってるの?」


充希の突っ込みに、そう言えばそうだなと思った。お互い呼び方に関しては意識していないというか、話にすら出てこなかった。


「なんか、今更…ねぇ?」


「あぁ。照れ臭いっつーか」


「ヘタレか、お前」


次の数学のノートを丸めて河西くんを叩いた。


それもかなり、思い切り。



「いって!!お前ノートの使い方ちげーんだよ」


「使い方なんて人それぞれでしょー?」



呼び方か…あまり深く考えたことなかったけれど、河西くんはどう思っているのだろう。話に出てこなかっただけで、本当はそうして欲しいと思っているとか?


私自身は…呼ばれたら、多分恥ずかしくなる。自分の恋愛経験の無さに嫌気がさした。




「涼…」


聞こえないように、河西くんの下の名前を小さく呟いてみた。


いや、慣れない。何だか変な感じがする。何も言われない限り、今まで通りの呼び方で呼んでみよう。