「お待たせー。はい高橋オレンジジュース。鵜崎も、ほら」
「ありがとう」
「ゴチです先輩!」
涙が引いたのか、先程の高橋さんが嘘みたいだ。
私と高橋さんは距離を取って座っていたので、真ん中がだいぶ空いていた。
河西くんは、その空いたところに座った。
夕日が沈みかけている頃、園を出る人たちが目の前を通って行く。
家族やカップル、友達同士で来ている人たちも多いだろう。
果たして私たちは、周りの目にはどう映っているのだろう。
「あーあ、諦めるしかないのかなー?」
そう言ったのは高橋さん。
その意味が分かるのは、私だけ。
「何が??」
「先輩は知らなくていいですよーだ」
いつの間にか彼女に笑顔が戻っており、その変わりように困惑するのは当然のことで。
「私やっぱ帰りますね!」
「え、高橋さん?」
突然立ち上がって何歩か進み、ゆっくりと足を揃え、体ごと振り向いた。
「何か自分がやってること、バカバカしく思えてきて。今日は諦めます」
「き、今日は?」
「はい。それじゃあ!」
突然現れ、突然去っていく。まるで嵐のような子。
結局私にとって彼女の存在はどういうものなのか、位置付けがわからないまま終わった。
「何だ?あいつ」
何も分からない河西くんは口をぽかんと開けている。
「河西くんは、モテモテだ」
「...は?」
あれは宣戦布告なのだろか。
でも、あの涙は...
きっと本物だった。