10年愛してくれた君へ


「今日は珍しく頭がきれてるな、鵜崎」


「え、酷い!まるでいつもがアホみたいじゃん!」


「違うのか?」


持っていたマップで河西くんを叩く。


「おいおい伊藤みたいなことすんなよ」


ずっと黙っている高橋さんにちらっと目をやると、浮かない顔をしていた。


「...あ、ごめんね、二人ではしゃぎすぎていたかも」


咄嗟に謝るが、『いえ、気にしないでください』と一言。



とりあえず落とし物センターだ。


ここから割と近い場所にある。






目的地に着き、受付の女性に声を掛けたのは河西くん。


「あの、すみません。携帯の落とし物届いていませんか?」


「どのようなデザインでしょうか?」


セキュリティーのために、その落とし物の詳細など事細かに聞かれる。


高橋さんの言っている条件と合った物が見つかったのか、受付の女性は1台の携帯を差し出した。


「こちらでしょうか?」


「はいこれです!よかったー」


「よかったね高橋さん」


携帯が見つかり、ほっとした顔を見せる高橋さん。


先程までの浮かない表情は、きっと不安だったからだろうと自己解決した。



「では、こちらに受け取りのサインをお願いします」


「はい」



高橋さんのサインが済み、センターを後にした。