「...って、試合前に何言ってるんだろうね私!!あ、スタメン発表されるよ!!」


「...」



先程の話題にはどちらも触れないまま、時間が過ぎていった。


試合は互角の勝負。


片方が点を取れば、もう片方が追いつき追い越すという展開が続く。


野球は両チームとも沈黙していたら退屈に感じてしまうスポーツだが、ピッチャーとバッターとの勝負ひとつひとつに大きなドラマがあり、
心理戦のようでワクワクする。



「見ごたえあるね!春兄!!」


手に汗握る試合。


応援バットを握り締めながら隣の春兄を見る。


「そうだな」



笑顔の春兄が傍にいるだけで安心する。


この笑顔をずっと守っていきたい...なんて、お前誰だよって。


でも、本当にそういう気持ちでいる。



いつか春兄が、自分の事で幸せになってほしいって。