10年愛してくれた君へ

「あの、彼女が何か?」


「何もクソもねぇよ!そこの女がよそ見してぶつかって来たんだよ!!あ??お前もクソ球団のファンかよ!他球団見下す奴らばっかりなんだよなぁ腹立つ!!」


ヒートアップするおじさんの怒り。


それでも春兄は落ち着いていた。



「ぶつかったのは、すみません。でも見下してなんていませんよ。僕は鳥山選手とか大好きなんです」


春兄がそう言うと、おじさんの表情がコロッと変わった。


「お、まじか!?マイナーなところ行くねぇ~兄ちゃん」


「目立つ選手じゃないですけど、小技とか粘るバッティングとか、結構好きですよ」


「だよなーだよなー!俺は根っからのファンでよ~」


おじさんはユニフォームの背中をくるっと体を捻らせてこちらに見せた。


どうやた春兄が褒めていた選手は相手チームの選手らしい。



背番号の上にある名前は、春兄の口から出た名前と同じだ。




「ユニフォーム、シミついてますよね、クリーニング代お支払いします」


「い~んだよ気にすんな!!これから気を付けてくれればいいだけさっ!じゃあ今日はよろしくな~あ、勝つのは俺らだけどな。あっはっはっ!!」


おじさんは大きく笑いながら私たちの前から姿を消した。