10年愛してくれた君へ

やっとのことで球場内に入ることができた。


「人やばかったね春兄」


「相手チームも人気球団だから、ファンがごった返してたんだろうな」


席に着く前に軽食と飲み物を買おうと売店に並ぼうとしたが、とにかく列が長い。


私が欲しい食べ物と飲み物は違う売店だから、両方並ぶとどれだけ時間がかかるか...



「藍は何食べたい?」


「え?えっと...あのホームランセット!でも飲み物はあっちのスムージーがいいんだけど...時間かかりそうだからなぁ。あー迷う!!」


頭を抱え悩んでいると、春兄はふっと笑って私に千円札を差し出した。


「じゃあ藍はスムージー買ってきな。俺はこっち並んでるから」


ホームランセットを売っている売店を指さしながら言う。


「うん!ありがとう!!あっお金...」


「毎年恒例だな、このやり取りも。当然俺のおごりだから」


『ほら、さっさと行ってきな』と優しく背中を押される。


『ありがとう』と言って目的の売店に駆け寄った。