10年愛してくれた君へ

「合宿楽しかった?」


「んー、勉強は大変だったけど、それ以外は楽しかったかな」


「そっか…そうだよな、彼氏もできたしな」


悪戯っぽく笑いながら言う。


「何?からかったりしないでね?」


一歩大きく踏み出し春兄にぐっと近づいた。


「しないしない。でも、寂しくなるな〜俺」


「どうして?」


一度私から目を逸らし、そして再びじっと見つめる。


力強いけれど、柔らかさもある、そんな目だ。



「彼氏できたらさ、もう今までみたいに俺を頼ってくれることもなくなるのかな〜と思ってさ」


「…っ」


私は春兄に頼ったり甘えたり、この歳になってもそういうことを続けることが春兄の負担になっているのではないか、と不安に思うこともあった。


少しずつだけれど、自立していこうと決心したのは最近。


春兄は、寂しいって思うの…?


考えて考えて、私がようやく口にした言葉は…



「で、でも、私も大人になるし、来年から大学生だし…いつまでも春兄に頼りっぱなしでいるわけにはいかないよ!」


笑顔を春兄に向けたが、私のその言葉に春兄は寂しそうに笑った。


「…そうだよな、藍も子供じゃないもんな」


どうしてそんな顔をするの?


悲しませるつもりなんて、全くなかったのに…