試合は、想像通りといいますか、でしょうね、と言いますか、地味な結果で終わった。


結局、結果を出せなかった4番の私だが、改めて野球(もといソフト)の難しさを知った。


『どんまい』と軽い感じに声を掛け合う中、一番悔しがっている黒山を冷めた目で見るクラスメイトたち。



「お、お前たち…スポーツってのはな?野球ってのはな?……」



始まった。


さすがに呆れていると、後ろから『鵜崎』と呼ばれる。


振り返ると、そこには河西くん。



「ちょっと…いいか?」


「あ、うん。ごめん充希。ちょっと行ってくるね」


隣にいた充希にそう告げ、河西くんの後に続いた。


「…行ってら〜」





クラスの群れから離れ、人気の少ない場所に連れて来られると、河西くんはゆっくりと私の方に向き直した。



「ふぅ…あのさ、鵜崎」


「う、うん?」



なんか…このシチュエーションって…


まるで…



「急にこんなこと言うと困ると思うんだけどさ、俺…」


「…」


「俺、鵜崎が好きだ」


…え?


いや、まさか…え??


「あの、それは、友達と…して?」


そうだよね?河西くんが私を恋愛対象として見ているはずない。


ずっと私の片思いだもん。



しかし、その考えは河西くんの真剣な眼差しで違うことに気づいた。


「女として、好きだ」


嘘…私、河西くんに告白されているの?




今起きていることに頭がついていけず、しばらく言葉が出なかった。



「…付き合って欲しいんだけど、ダメかな?」


バツが悪そうに笑う河西くんを見て、慌てて口を開いた。


「だだだだダメじゃない!!私も好き!!河西くんが好き!!」


「え、まじで?」


「うん…てか、ずっと好きだった」


恥ずかしくなって目線を下にズラすと、急に視界が真っ暗になった。



「か、河西くん?」


今、抱きしめられてる!?


うわー、やばい、ドキドキが止まらない。



「俺今日ずっと緊張してたんだ、自分から告白するの初めてだから…前から伊藤にも相談乗ってもらってたし」


「え、充希?」



そうか、だからか。


色々知っているような素ぶりを見せていたのは、それが理由だったのか。



「よかったー…本当に」


「河西くん…」



まさかこんな形で気持ちが通じ合うなんて思ってもいなかった。






二人でみんなのところに戻り、真っ先に充希に報告した。


「おぉ、くっ付いたか」


「充希知ってたんだね」


「まぁね。仲介役は大変よ」


何故か浮かない顔をする充希。


でもすぐに『ちゃんと藍を幸せにしろよ』と河西くんに軽い蹴りを入れたのを見て、なんだ、いつもと変わらない、と思った。




私が…河西くんと…



信じられないけれど、現実なんだ。




その後工藤くんにも報告して、工藤くんは『良かったな』と祝福してくれた。


もう一人、報告しなければならない人がいる。




私は次の授業が始まる前に春兄に電話をした。