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翌日の授業も相変わらず暇で、終わった途端みんな机に突っ伏していた。


最初はみんな乗り気じゃなかった球技大会だけど、縛られるように勉強させられていた環境にいると、体を動かせるのは何とも解放的で…







「おっしゃやるぞーーー!!!」


「「「おーーーっ!!!」」」




何故かみんな、気合い十分。


でも、一番気合いが入っているのは…




「いいかお前らよく聞け!野球ってのはな!?……」



黒山なのかもしれない。






守備位置と打順は黒山が勝手に決めていた。


未経験者ばかりだからこだわりようがないのだけれど、ごめん、黒山の期待には答えられそうにないよ。



「藍が4番とかおかしくね?」


「私もおかしいと思うよ」


何で私が4番なのさ。


黒山が記入したスターティングメンバー表を睨みつける。


「まぁ頑張りたまえ」


充希は『かわいそうに』とでも言いたそうな顔で、背中をぽんと叩いてきた。



「鵜崎ー」


「あ、河西くん。聞いてよ私4番なんだけど」


「え、まじ?野球の4番ってつえーんだろ?」


「うん。やばいよね」


肩を落としてため息をつく。


「俺なんてスタメン落ちだぜ?」


「え、それはかわいそう」


「だろー?」



ふと昨日のやりとりのことを思い出し、河西くんに聞いてみた。


「あ、そうだ、河西くん話があるって…」


すると河西くんの顔はみるみる赤くなっていった。


「あ、お、おう。でも試合終わってからな。声掛けるから。そしたら、話す」


いつもと様子が違い、それが気になった。


明るくフレンドリーに話しかけてくる河西くんしか知らないから、こんなに恥ずかしそうに喋るのは珍しい。


まさか…いや、まさか、ね。



河西くんにとって私はただの"友達"だもん。


ないない、あり得ない…