無事に初日の授業を全て終え、宿舎にやって来た。
久々に脳をフル回転させたから、いつも以上に疲れた。
「藍ー、お風呂入りに行くっしょ?」
「うん、準備するからちょっと待ってて!」
タオルや着替えを既に持っていた充希に一言声をかけ、カバンの中から必要な物を取り出す。
この宿舎は部屋にお風呂がついていないから、大浴場に行くしかないんだ。
人に体を見られるのが嫌で、温泉が苦手な私だけど、ここは我慢我慢。
って言っても、大したスタイルしてないんだけどね。
充希と大浴場に向かい、体を流してお湯に浸かる。
「はぁ〜。いい湯じゃ〜」
「充希、日に日にババァ化が進行しているみたいだけど」
「え〜?いいんだよ〜どうせ将来ババァになるんだから〜」
私たち以外にももちろん他の生徒がいて、それも次々と人が増えていく。
あまり長居はできそうにないな〜と思いながらも、会話に浸った。
「…春人さん」
ボソッと呟いた充希。
「春兄がどうしたの?」
「んー…私も自分がどうしたいのか、どうなってほしいのかわかんないんだけどさ…ただ優しいだけで生きているわけじゃないと思うよ?」
「…どういうこと?」
「…近すぎると気づかないこともたくさんあると思うから。手遅れになったらおしまいだから」
私は充希が何を言っているのか分からなかった。
まただ。
また春兄のことを言うとき、こうして遠回しに伝えようとするんだ。
「あーのぼせて来たー。私出るね」
「あ、充希」
充希は先に上がっていった。
その後ろ姿を見送り、顔の半分まで浸かって鼻から空気を出してぶくぶくさせた。
…わからない、わからない!
充希が何を伝えようとしているのかわからないよー!!



