10年愛してくれた君へ



無事に初日の授業を全て終え、宿舎にやって来た。


久々に脳をフル回転させたから、いつも以上に疲れた。



「藍ー、お風呂入りに行くっしょ?」


「うん、準備するからちょっと待ってて!」


タオルや着替えを既に持っていた充希に一言声をかけ、カバンの中から必要な物を取り出す。


この宿舎は部屋にお風呂がついていないから、大浴場に行くしかないんだ。


人に体を見られるのが嫌で、温泉が苦手な私だけど、ここは我慢我慢。


って言っても、大したスタイルしてないんだけどね。





充希と大浴場に向かい、体を流してお湯に浸かる。


「はぁ〜。いい湯じゃ〜」


「充希、日に日にババァ化が進行しているみたいだけど」


「え〜?いいんだよ〜どうせ将来ババァになるんだから〜」



私たち以外にももちろん他の生徒がいて、それも次々と人が増えていく。


あまり長居はできそうにないな〜と思いながらも、会話に浸った。




「…春人さん」


ボソッと呟いた充希。


「春兄がどうしたの?」


「んー…私も自分がどうしたいのか、どうなってほしいのかわかんないんだけどさ…ただ優しいだけで生きているわけじゃないと思うよ?」


「…どういうこと?」


「…近すぎると気づかないこともたくさんあると思うから。手遅れになったらおしまいだから」


私は充希が何を言っているのか分からなかった。


まただ。


また春兄のことを言うとき、こうして遠回しに伝えようとするんだ。



「あーのぼせて来たー。私出るね」


「あ、充希」


充希は先に上がっていった。


その後ろ姿を見送り、顔の半分まで浸かって鼻から空気を出してぶくぶくさせた。


…わからない、わからない!


充希が何を伝えようとしているのかわからないよー!!