「どうして別れちゃったの?春兄がフられたって言うのは前に聞いたけど」


「藍は知らなくていい話だよ。これは俺の問題だから」


…また、はぐらかされた。


そうやって一人で抱え込まないで?


私だって、春兄の力になりたい。微力かもしれないけれど、春兄の為に出来ることがあるのなら。



「もしかしてまた子供扱い?私だってね、相談とか乗れるんだから。春兄が何か大変なことに巻き込まれないか不安だから、その元カノのミナミさんとのこと、私も知っておきたい」


「知らなくていいこともある」


「どうして?私は春兄に色んなこと話して来たよ?だから春兄も…「もうやめてくれ!」」


私の声を遮り、春兄が怒鳴った。


シーンと静まり返る車内。



春兄が私に怒鳴った。今までこんなこと、一度もなかった。昔、どんないたずらをしても笑って許してくれていた春兄。



「は、春…兄?」


絞り出すように声を出した。


いつもみたいに、優しい笑顔を浮かべてくれる。そう思っていたのに…




「…」



家に着くまで、春兄が言葉を発することはなかった。




私の家まで送り届けてくれた春兄。


車から出て、運転席の春兄に『ありがとう』と声をかけるも、返事をしてくれるどころか目も合わせてくれなかった。





…せっかくプレゼントを渡せたのに。


春兄を怒らせたままバイバイしちゃった。