地元の駅に着き、携帯を開いた私は春兄にメッセージを打つ。
【春兄、今家にいる??】
すると、すぐに返事が来た。
【前見てみ】
…前?書かれていた通り顔を上げて前を見た。
「春兄!!」
「よっ。どっか行ってたのか?」
びっくりしたー。まさかこんなに近くにいたとは。
「うん、いつものショッピングモール行ってたの。春兄は?」
「俺は車で出掛けていてその帰りにそこの本屋に寄ってて。そしたら藍見かけたから声かけようとそのまま来たんだ」
「そうなんだ!あのね、春兄に渡したい物あるの」
「渡したい物?」
「うん!」
サプライズだったので、春兄を驚かせるワクワクが勝ってしまい、手に持っていたプレゼントをそのまま差し出そうとした。しかしここは駅間、どう考えても雰囲気的に微妙だ。
差し出す寸前で手を止めると、『とりあえず車乗るか』と言ってくれたので、近くに停めてあった春兄の車の助手席に乗せてもらった。
春兄が運転席に乗ったのを確認して、持っていたプレゼントを差し出す。
「これ、春兄に。お誕生日おめでとう!これ買いに行ってたの」
すると春兄は目を細め、柔らかく笑った。
「ありがとう。わざわざ買いに行ってくれたのか。嬉しいよ」
いつものように、私の頭にポンと手を乗せる春兄。私の大好きな、大きくて温かい春兄の手。
「開けていいか?」
「うん!あ、でもメッセージカードは帰ってから見てね?恥ずかしいから」
「メッセージカードもあるの?誕生日メッセージはくれたのに、ありがとうな」
優しい笑みを浮かべながら、ラッピングを丁寧に外していく。
こういう時、ぐしゃぐしゃっと開けないで、丁寧に開けていくところが春兄らしい。
「うわっ!めっちゃいいじゃん!こういうの欲しかったんだ。ありがとうな、藍」
「もう、春兄ってば何回ありがとう言うの?」
「え、そんなに言ってたか?」
「言ってる!もしかして自覚ない?」
「いや、ありがとうって思ったからありがとうって言っただけだよ」
「じゃあ春兄は、普段からたくさん感謝してるんだね」
そう言うと、また優しく笑い、『そうなのかもな』とだけ言って再び目線をペンケースに戻した。
「帰ったらさっそく中身入れ替えるよ」
「うん!そうして!」
「今日は一人で行ってたのか?充希ちゃんと?」
「ううん!ひと…」
『一人』と言おうとしたけれど、途中で言葉が止まった。一人で行ったけど、実際一人じゃなかったわけだし…
「えっとね、前に話した、私の好きな人。たまたまそのショッピングモールで会ったから買い物に付き合ってもらったの」
「…あー、そうなのか。楽しかったか?」
一瞬表情を曇らせたけれど、すぐに穏やかな笑みを浮かべながら問うてきた。
「うん!何だかドキドキしっぱなしだったもん!春兄のプレゼント買って、ご飯食べて…」
ご飯…あのお店にいたミナミさん。彼女とのこと、聞いてみてもいいかな?



