10年愛してくれた君へ

「その前は?」


「その前?」


「その前の彼女は?」


「いないよ、俺一人としか付き合った事ない」


「長かったの?」


「そうだな、3年くらい付き合ってたかな」


やっぱり、恋愛経験の少ない私とは大違いだ。


こんなに優しい春兄だもん、彼女のこと、大切にするよね。


でもそうなるとまた別の疑問が出てくる。



「どうして別れちゃったの?」


「…俺がフられたの」


え、嘘、春兄なのに?


フる要素全くないじゃん。


「理由は?」


「まぁいいじゃん俺の話は」


また誤魔化された。


気になるなー。





「そうだ、合宿っていつからなんだ?」


春兄は話題を変えてきた。


合宿…いつからだっけ。


しまいっぱなしの行動表をカバンから取り出し、日にちを確認する。


「えっとね、再来週の月曜から三日間だって」


「再来週の月曜か。集合場所は?」


「さくら野駅に8時!そこからみんなで移動するらしいよ」


「さくら野駅か。再来週の月曜、午後に面接あるだけだから、車で送ってやろうか?」


思わぬ提案に目を丸くして春兄を見上げる。


「え?いいよ面接あるなら午前はたっぷり寝ときなよ!」


「面接あるから午前に藍の顔見ときたいんだ」


「えっ…」


「それにその時間にその駅だと、通勤ラッシュで結構大変だと思うし」


確かに…


この路線のこの駅は、サラリーマンたちがごった返すからかなりキツイかもしれない。


でも、忙しい春兄にそこまで…




「…俺に遠慮するなよ?」


私の目線の意味に気づいたのか、笑顔でそう言った。