10年愛してくれた君へ

「多分ね、多分だけど、好きなのかもね」


言ってて恥ずかしくなり、ニヤニヤする充希の横を早歩きで通り過ぎる。


その後すぐに追いつかれ、肘で突いてくる。



「恋に恋する藍ちゃんで終わらないようにね〜?」


「もー、うるさいな!」



実際のところ、今までそういうのばっかりだったからなくなはい。


でも、今回は違う気がするんだ。




「彼女いるのかな、河西くん」


「さぁ?本人に聞いてみればー?」


「もうニヤニヤするのやめて!!」


「あははー」







結局散々からかわれたまま充希と別れた。


いつもより帰り時間が長く感じた。




別れ際に言われた、『春人さんには相談しないようにね〜』っていう言葉がちょっと引っかかったけど、あれ何だったんだろう。


どうして春兄には相談しちゃいけないのかな?



悩みを真剣に聞いてくれて、いつも的確なアドバイスをくれる春兄。


昔から、相談するなら春兄!っていうくらいにたくさん話を聞いてくれた。


充希はどういう意味で言ったのだろう。



少なくとも春兄は私よりも全然恋愛経験あると思うから、そういう相談事とかしやすいんだけどな。




「藍ー!」



色々考えながら歩いていると、後ろから呼び止められた。


タイミングが良すぎることに、声の主は春兄だった。


スーツを着ているところを見ると、今日も説明会だったのかな?


相変わらずスーツが似合っている。




「就活してますねーお兄さん」


「何だよその言い方」


柔らかく笑う春兄。


今日みたいな暖かな日に春兄の笑顔はよく合う。