10年愛してくれた君へ

「なになにー?廊下まで藍のでっかい声聞こえたんだけど!」


「あ、充希おはよ」


「おっす伊藤」


教室に入って来たのは充希だった。


充希は席にカバンを置くなりグイグイ話題に入って来る。


「で、どした!?」


「いや、別に…」


「は?親友の私に隠し事するつもり!?」


「違くて!そんな大した話じゃないから」


「俺が毎朝ランニングしてるって話にびっくりしてただけだよ」


充希を落ち着かせようとそう言った河西くんに食いついた。


「え、河西ランニングするの!?毎朝!?そりゃびっくりするわ」


「何だよ二人して」


『ひでー』と机に突っ伏す河西くん。


良かった、いつもの空気に戻った。




さりげなくフォローしてくれたのかな。


ちょっぴり胸がくすぐったくなった。










「いやーそれにしても河西がランニングなんてね」


「今日はその話で持ちきりだったね」


私たちはそんな話をしながら校門まで歩いていた。


部活動に励む生徒たちの声が飛び交う中、ある人物の名前を呼ぶ声に足が止まる。


「河西こっち回せ!」


目を向けるとサッカー部。


ボールを操る河西くんの姿だ。



「藍ー?」


私の少し先を歩いていた充希が振り返る。


「何ー?河西じゃん」


「うん…そだね」


視線は河西くんに向けたまま、小さく呟いた。


サッカーしてる姿初めて見た。


かっこいいな…




「ねぇ、やっぱラブな予感当たってるんじゃないの?」


「…え!?」


「好きなんでしょ。好きそうなタイプだもんね、河西みたいなの」


「なななな何言ってんの!?違うから!あーサッカーしてんなーっていう目で見てただけだから!!」


「サッカーしてんなーかっこいいなー好きだなー、でしょ?」


充希には何言ってもダメな気がして来た。


この際言っちゃおうかな。