10年愛してくれた君へ




翌日。


いつもより早く学校に着いた。


毎朝バタバタした時間を過ごしていたから、優雅な朝は久しぶり。


基本的にみんな時間ギリギリに来るから、校門に駆け込む大勢の中の一人に私がいる、という感じだった。


でもこの時間だと生徒自体あまりいなくて、いてもちらほらだから、何だかいつもと違う朝を過ごしているよう。


決して早起きできたわけではなくて、眠れなかったのだ。



「あ、鵜崎おはよー」


「あ!!お、おはよ…河西くん」


河西くんのことばかり考えていて、眠れませんでした。


いつもと違う私を変に思ったのか、あまり目を合わせようとしない私の顔を覗き込んできた。


うわー近い、緊張するよー…



「何か元気なくね?」


「え?そんなことないっ」


「そうか?」


それだけ言うと、河西くんは私から離れ席に着いた。


教室には私と河西くんと、他に3人いるだけで、その3人は私たちと離れたところにいるから実質二人きりみたいなものだ。


あー、充希早く来てー!!



「……」


「……」


まずい、私が変に意識しちゃっているせいか、無言が続く。


な、何か話題を…



「今日鵜崎早いのな」


先に口を開いたのは河西くんの方だった。


「あ、うん、たまにはね〜!河西くんはいつもこの時間?」


「まぁな。毎朝6時に起きてランニングして軽く飯食って来てんだ」


初めて聞いた河西くんの朝のスケジュールに興味津々。


「え、毎朝ランニング!?凄いねストイックだ!」


「ほら、俺サッカー部じゃん?体づくりだよ」


ますます好感度が上がる。


「この時間に学校に着いてるのも、案外いいものだね」


「だろ?余裕持って過ごすのって結構いいんだよ」


楽しそうに言うものだから、私も自然と笑顔になった。


「…好きだなぁ」


「…え?」


「…え?」



え?今、私何て言った??


「好き…って?」


さっきまで笑顔だった河西くんの顔が急に真剣なものになり、漏れた心の声が河西くんに聞こえていたことに気づく。


私…好き、なの?


河西くんを?




「ち、ちちち違くて!!そうやって自分に厳しく生きている人って、いいよねって意味で!!!!」



恥ずかしくなって思わず声を張り上げてしまい、教室にいた他の人たちの視線がこちらに向けられた。



「あぁ、そう言う意味ね」


『なんだ』と笑顔に戻った河西くんを見て少しホッとした。


でも私は気づいてしまった。



自分の気持ちに。