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「春兄本当に大丈夫なの〜?」


天気は晴れ、風も比較的弱いこの日。


近くの公園で私と春兄はキャッチボールをしている。


子供達がかけっこをしたりボール遊びをしたりしているその中心で。



「大丈夫だって。俺、結構頑丈なんだ」


白いボールが行ったり来たり。


ボールと一緒に言葉も投げ交う。



たとえ無言でも、行き交うボールにお互いの気持ちが乗っているかのよう。



「ねぇ、春兄は社会人になっても野球やるの?」


小さい頃から野球を続けてきた春兄。


ずっと大好きなスポーツだから、春兄にはこれからもそうしてほしい。



「そうだな〜。こんなに長く続いたのって野球くらいだから、これからもやるつもり」


「そっか!よかった!」


そしてしばらくまた無言が続いた。


春兄は何かを思い出したように、私からのボールを受けてそこで動きが止まる。


不思議に思いながら返球を待っていると、春兄は顔を上げて言った。



「もう一つ、長く続いたの思い出した」


「…?」


そして、ボールを何度か自分のグローブに軽く投げつけ、再び口を開く。





「…藍を好きなこと」


「っ!!」


まっすぐ私の目を見る。


力強くも優しい瞳に吸い込まれていくような感覚だ。


「今までも長く続いたし、これからもそのつもり。いや、絶対そう」





ずっと春兄の"愛"に支えられて生きてきた私。


たくさん遠回りして、やっと理想の関係になることができたね。



「私も!!ずっと大好きだからね!!」



柔らかく微笑む春兄に太陽の日差しが重なる。



10年愛してくれた君を、私はこの先10年、20年、何十年も…




たくさん、ずっと、愛し続けます。






『10年愛してくれた君へ』-END-


※二人のその後のお話は続編にて…