10年愛してくれた君へ


それから数日後、春兄は無事に退院した。


特に異常は見られず、思ったよりも回復が早かったみたいで、先生たちも驚いていた。


春兄の意識が戻った日に、充希と河西くんには色々報告したのだけれど、充希は『退院したら会いにいくわ。今は遠慮なくラブラブしてなさい』とか言うから…



だから今日、充希と河西くんに会う約束をした。


もちろん、春兄も一緒にね。



集まった場所は学校近くのファミレス。


この四人がちゃんと揃うのって、意外にも初めてかもしれない。


「春兄さんお元気そうで!本当に怪我してたのか不思議なくらいですよ」


河西くんは相変わらずのテンションで春兄に絡んでいく。


充希と春兄が顔を合わせるのも久々のはずだ。



「やっと気持ちが伝わって、よかったですね春人さん」


「え?充希ちゃん知ってたっけ?」


目を丸くする春兄。

ここで、充希の今までの奇妙な言動の意味がだんだんと明るみになっていく…



「え、逆に知ってたことを知らなかったんですか?見ていればわかりますよ。春人さんが藍を好きだなんて」


「え?知ってたの?」


秒遅れで私は反応した。


「逆にあんたは全く気づかないなんて凄いわ。遠回しに色々伝えてやってたのに。なのに河西と付き合うし」


「なんかすんません」


そう謝ったのは河西くん。


「いや、私は藍のこと好きだから。ついでに河西も、もちろん友達としてね?だから、二人が幸せになるのは喜ばしいことなんだけど、春人さんの気持ちも知ってるから…あーあん時はモヤモヤしたわ〜」


そうか、だから充希は春兄のことになると、直接的な言い方を避けていたんだ。


これまでの言動に納得した。