10年愛してくれた君へ

南からまさかと思うような連絡が入ったのは、それから間もない時だった。


【私のクラスに春人の幼馴染の子がいるわ】


…嘘だろ。何クラスもある中から、どうして藍のクラスを任されるんだ。俺にとっては悪い運だ。


【藍には何も変なこと言うなよ?】


俺が隠して来た過去を話されたら、藍に幻滅されてしまう。


当時南に振り回されていたと言っても、それは俺の責任でもあった。


藍にとって理想の"春兄"であるために、藍には知られたくないことがたくさんあるんだ。


【あら、変なことって?】


【俺らが付き合っていた時のこと、詳しく話したりするなって意味】


前に藍が俺たちの関係を深く聞いて来たことがある。つまり、少なくとも気になってはいるということだ。


藍のことだから、直接南に聞いたりする可能性もある。しかし、南の口からそれを語られなければ、藍に知られることはないのだ。



【その頼み聞いてあげるから、私にも協力してよ】


またそれか。何度も断っているはずだ。だけど…何を仕出かすかわからない。


自分を守るため、南の要件を飲むことにした。


本当にダメな人間だ…俺は。