10年愛してくれた君へ


翌日鳴った携帯を手に取れば、また藍からの電話だ。


今度はどんな愚痴が出てくるのかな、と電話に出ると、それは聞きたくない知らせだった。



『あのね、実は…河西くんと付き合うことになったの!!』



覚悟はしていたけれど、実際にそうなるとかなり辛い。しかし、藍はとても嬉しそうに告げてくる。彼女の弾んだ声が耳を通るたびに、俺の心は対照的に沈んでいく。


きっとそんなことは思ってもいないだろう藍の口からは歓喜の言葉を次々と発する。


そうだよな、ずっと好きだったんだもんな…おめでとう、藍。幸せにしてもらえよ?




藍からの報告の電話を切って間もない頃に、南からの着信が入る。


…なんだ、まだ用があるのか。



「もしもし」


『もしもし春人?ねぇ、もう一度考え直してくれない?困っているの』


「何度も言うけど、俺にはできないから。南なら他に男友達いるだろ?別に俺じゃなくても…」


どうして俺に執着するのかが分からない。こんなに断っているのだから、他を当たった方が早いはずだ。



『…春人じゃないとダメなの』


「ダメな理由は?」


『彼に劣らないルックスじゃないと、彼も諦めてくれないから』


あまりにもくだらない理由で呆れる。


あの頃に感じた嫌な気持ち、そして疲れが再び募ってきた。