10年愛してくれた君へ

「俺が女だったら即OKするのによ。サークルの女子なんて殆どお前のこと好きだし、だからサークル内カップルが誕生しないんだ」


「殆どの女子って…マネージャーの三人しかいないだろ」


「あーいいよなーお前には本命がいて。しかも幼馴染の女の子ときたもんだ。俺もほしい」


机に突っ伏す木下を無視して板書を写す。


木下は、喋りたいときは喋らせるのが上手い扱い方。


こちらが特に反応しなくても一人でベラベラ喋り続ける、そんな男だ。



聞き手でいることが楽な俺にとって、木下とは良いバランスがとれていると自分では思う。



「神様は不公平だ。どうしてこいつに完璧なルックスと性格と才能を与えてしまったんだ」


「そろそろ黙った方がいいんじゃないか〜?」


あの教授、結構耳と目がいいからどんなに後ろに座っていても、木下みたいなやつは目をつけられる。



「ごぉら木下!またお前か!単位やらんぞ!」


「うっわ!こえー!猛省するんで単位だけは下さい」


ほらな。だいたいこんなに人数いるのに顔と名前が一致されているなんて致命的だぞ。


講義室中の視線がこちらに注がれる中、俺は哀れんだ目で木下を見る。


「あーあ、竹内になりてぇな。今度その幼馴染ちゃんに会わせろよ」


「…絶対に嫌だ」


ロクなことが起きない。


藍が木下に遊ばれる様子が簡単に想像できる。


「独占欲強すぎ。お前って意外と冷たいやつだな」


…別に意外でも何でもない。


元からそこまで優しい人間ではない。


「でも、またそこがいいんだろうな〜」


「…どこが猛省だよ」


注意されるも懲りずに一人で喋り続けるに半ば呆れながらも、木下の話に耳を傾けた。


だけど、こういう世話がやける奴って何だか放っておけないんだよな。


そんなことを思いながら、教授の話を聞いていた…