10年愛してくれた君へ

呆れて席を立ち上がる。


伝票を持ってレジに向かい、会計を済ませた。



店を出て足早にそこから去ろうとするが、後をついてくる南。


「春人!…ねぇ春人ってば!」


だいたい俺が甘やかしすぎたんだ。


当時、もっと厳しくしていれば、こうして俺に頼ることはなかったはずだ。


そう、もっと厳しく…




できたのか?俺は。



南のことを無視してそのまま歩き続けるが、彼女は諦めようとはしなかった。


「春人!迷惑なのはわかってる!でも今回だけだから、今回協力してくれればいいから!だからっ…」


ついに俺の中で何かがプツンと切れる。


人がいることなどお構いなしに怒鳴ってしまった。



「いつもお前はそうやって、人のこと振り回して」


南は少し怯むが、怖気付くことなく言い返してくる。


「ちょっと協力してって言ってるだけじゃない!昔はすぐ何でもしてくれたのに、どうしちゃったのよ」


何だよそれ。


まるで断っている俺がおかしいみたいだ。


「お前のそういう我儘なところに疲れたんだ。もう俺に関わらないでくれ」


そう言い捨て、別方向へ歩き出す。


「ちょっと春人!待ってよ!」


それでも尚、南は後を追ってくる。


いい加減にしてくれって。



結局その日は南を納得させて帰らせた。


まさかあの場面を藍に見られていたなんて、その時は気がつかなかった…