10年愛してくれた君へ


最終面接は意思確認と言って面談のようなもの言われているし、何とか1社、内定は貰えそうだ。


安心して会社を出て、携帯の電源を入れる。


すると、何件かメッセージが届いていた。



「は?南?」


思わず声が出てしまった。


送り主は南。別れてから連絡を取ることはなかったから、一体何のようだろうとアプリを開く。


その内容を目にし、眉間に皺が寄った。



【春人久しぶり。

ちょっと、相談に乗って欲しいことがあるんだけど…


いつか空いている日ない?】



俺に相談?相談なら気心知れた友達にでもすればいいものを。


そう思いながらも無視するわけにはいかないので、とりあえず返事を打つ。


【明日なら大丈夫だけど】


すると返信はすぐに届いた。


【ありがとう!!春人の地元まで行くからその時に話すね!!】


【わかった】




そして翌日。


3年振りに南と会う。


場所は駅の近くのカフェ。


南は昔に比べ、更に容姿に磨きがかかっていた。


俺、この子と付き合ってたんだよな…




「…実はね?今の彼氏と別れたいの」


南からの相談内容は、暴力的な今の恋人と別れるため、俺に彼氏のフリをしてほしい、というものだった。


相談というより頼み事だ。



「なんで俺が…」


さすがの俺でもそんな頼みを引き受ける気にはならなかった。


そもそも南の今の彼氏のことを知るわけでもない俺が、どうして巻き込まれる形になるんだ。


「お願い!春人なら今の彼も諦めてくれると思うの!」


何だよそれ…意味が分からない。


また南の我儘に振り回されるのか?



「俺が行ったところで彼氏が諦めるとは思わないけど」


「でも、行かないとどうにもならないと思うの。本当に困ってるの!頼れるの春人しかいないの!!」


…やめてくれよ。


3年振りに連絡して来たと思えば、そんなことかよ。


そんなの自分で何とかしてくれよ。