10年愛してくれた君へ


「やっぱり私たち、合わなかったのかもね」


「そう…だな」


だったら最初からそうして欲しかった。


こっちから別れようと言った時に、そうして欲しかった。



そんなことを考えるよりも、ようやく南から解放されたことで肩の荷が下りたような気がして清々しかった。



その後、俺たちが連絡を取り合うことはなかった。







一方の藍は、日に日に女に磨きがかかってとても綺麗になっていった。気づけばメイクを覚えていて、髪も染まっている。


思えば藍はもう高校3年生。


相変わらず藍のことは好きで、でもそれを伝えることはなく時は流れる。




「春兄おはよ!今日も就活?」


「おはよう藍。今日は会社の説明会」


朝、藍に声を掛けられるとその日は一日中気分がいい。


大学4年の俺は就職活動でほぼ毎日スーツを着ていた。


就活中は他のことが考えられなくなるくらい忙しい、と俺が就活を始める前はそう聞いたことがあったけれど、そうは思わなかった。


嫌でもしなくてはいけないことだから、どうせなら楽しんでやろうという気持ちだったから。


それに、息抜きの時間もしっかり作りながらやっていた。だからストレスとかは特に感じない。藍の笑顔を見ていたら尚更だ。いや、逆に楽しくなる。



なーんて藍に言ったら、きっと引くだろうな。