10年愛してくれた君へ


俺は南に言われるがままになった。


南の求める形で愛を示し、そうすることで南は笑顔になる。



「やっぱりスポーツやってる男の体って最高。今までヒョロ男ばっかりだったから満足できなかったのよ」


「…そう」



隣で横になっている裸の南に何も感じず、ただ天井をじっと見つめていた。


南は体ごとこちらに向け、俺よりも少しだけ低い位置に寝ているため自然と上目遣いになる。


一瞥してすぐに目線を天井へ戻すと、南はぐっと体を寄せてきた。


「ねぇ、春人は満足できた?」


俺の腕を人差し指でなぞってくる。


俺って結構冷たい人間で、女だったら誰にでもベタベタされたいわけではない。


これが藍だったらいいのに…なんて、間違えても口に出してはいけないことを考えてしまっている。


「…あぁ」


気力のない返事にムッとする南。


彼女に対して疲れを感じ始めるのも時間の問題だと思った。



それから次第に南の束縛が強くなっていく。


最初は可愛いと思えた我儘もエスカレートし、どんどん先走る南の気持ちに俺は追いつかなくなってしまっていた。





「男ってもっとリードするもんじゃないの?何で私の言うことばかり聞いているの?」


「俺が何か言ったら南は文句言うだろ?」


「何よ!何でもハイハイ言っている自分がかっこいいとか思ってるわけ!?」


「は?そんなこと言ってないだろ」



南との付き合いに疲弊していた俺は、つい強い口調で言ってしまう。


なら別れればいい…そう思い、何度か俺から別れを切り出したことがある。


しかし…



「嫌よ別れないから!」



南は頑なに拒んだ。


もう南の求めるものを与えてやることはできない。


なのにどうして南は俺との関係を続けたがるのだろう。



訳がわからないまま、仕方なく付き合いを続けていた。


それからは特に喧嘩をするわけでもなく、時間だけが過ぎていった。


そして、突然訪れた別れの瞬間。


告げて来たのは南の方からだった。