10年愛してくれた君へ


「ねぇ、あの子…誰?」


俺の地元で遊ぼうとなり、待ち合わせ場所で南を待っていた俺は、たまたま藍を見かけて声を掛けた。


藍と別れたところにやって来た南にそう言われる。


「あぁ、俺の幼馴染の藍。あいつが生まれた時から一緒なんだ」


「…そう」





そして、そのような状況は何度も続き、やがて南の俺に対する当たり方が強くなっていった。


「ねぇ、私に見せない顔をあの子に見せるのやめて!」


「…は?」


「どうしてあんなに優しく笑っているの!?私にはそんな顔してくれたことなかったのに…」


そんなはずはない。


藍と南に対する態度をそこまで変えているつもりは全くない。


だから、そんなことを言われなんと返せばいいか分からなくなった。


「どうして?あの子子供じゃない!!もしかして春人、あの子のことが好きなの!?あんな子のどこがいいの!?」


いつの間にか藍を卑下する南。


さすがの俺でもそれは許せなかった。



「藍を侮辱するのは…やめてくれ」


「否定しないのね」


「え?」


「気持ち、否定しないのね…」



俺は…やっぱりまだ、藍が好きなのか?


叶わぬ恋。


叶えようとすれば、今の関係は壊れてしまう。



南のことを本気で好きになることができればいいのに…